70代前半の女性 重度の認知症(アルツハイマー型認知症)

会話がほとんどできない状態

 

 この例は一般の通所介護に通っていたのですが、強い力で外に出たがり、通所介護でも支援しきれずにいました。通所介護ではほとほと困ってしまいその都度、家に連れ帰ってしまっていました。そこで担当のケアマネジャーからいなせなデイサービスが相談を受けたのが始まりでした。

 ご主人とお会いしたところ、疲れがたまっているのが明らかで、まずはご主人の疲れをとるためにも、預かることを目的にそのための手段を講じました。

 

  1.  ご主人にお聞きしたところ、通院をしてもDrは本人の話しだけを聞いて、ご家族の話は全く聞いてくれないとのことで、医療への不信感をあらわにしていました。そこで、「信頼のできるクリニックを紹介」しました。このDrはご本人からの問診はもちろんのこと、ご家族からの聞き取りも熱心におこなってくれるかたです。
  2.  ここで、適切な症状の聞き取りができ、「服薬の調整も適切なものになり」ました。ここで、工夫したことは「Drへの情報提供」をケアマネとデイサービスから行ったことでした。ご家族だけではうまく状態を伝えられないと判断し、通院の同行を行い適当な情報提供になったと考えています。
  3.  デイサービスでは常にウロウロしている状態で落ちつかない様子でした。デイルームにもなかなか入ってくれないほどです。時には、半日以上も外を歩き続けていたこともあります。ところが、服薬も順調に行え、次第に私たちの声にも耳を貸してもらえるようになりました。「ようやくデイサービスの中にはいられる」ようになりました。
  4.  それと同時に、私たち職員のことを「安心できる存在と認識していただく」ことを行いました。ユマニチュードと言われていますが、信頼を得られるように振る舞い、支援しました。次第に安心して接していただけるようになりました。
  5.  次の課題は「ほかの利用者が受け入れらる」ようにどのようにするかでした。他の利用者が受け入れられないと、どうしてもデイサービスに通うことが難しくなってしまいます。そこで、その当人の気持ちや、その方の今までの人生などその方の代わりに、(ご本人は会話ができないので)周りのほかの利用者に伝えていったのです。そうすることで、周りの方が理解を示し、仲間の一因になることができました。
  6. そうしていくうちに、ご主人も疲れがとれてきたのでしょう。身なりもきちんとされてきました。表情も柔和になられご夫婦の生活はなんとか成り立つようになってきました。

 

 介護をするという大変な役目は、多くの人にとって初めてのことです。そのような中、適切な「医療」に「介護」につながるということはとても大切なことです。医療だけでもいけないし、介護だけでもいけません。医療と介護は両輪なのです。どちらが上でも下でもないのです。大切なのは、いつも見ている「介護」が、稀にしかみれないのに適切な判断をしなければいけない「医療」に適切に情報を提供できるかどうかなのです。ご家族だけにその責務を背負わせるのはとてもしんどいことではないでしょうか。また、適切な支援の道しるべを指し示せるのも、多くの経験を積んだ介護従事者なのです。

 医療と介護の連携の大切さを気づける例でした。